残酷な私
携帯にメールが届く。
何通も、何通も、何通も。
ヤザキが狂っていく。
少しずつ、死の香りが強くなっていく。
その波に足をすくわれないように、必死で肉体を自分の精神で縛っていることが、手に取るようにわかる。
限界を迎えたヤザキは、救いを求めて、仕事を終えてから、私の部屋へやって来た。
ヤザキは今まで、一度も私の前で、泣いたことがなかった。
決して強がっているわけではないけれど、泣けなかったのだ。
この夜も、バラ鞭で身体を打っても、一本鞭で身体を打っても、顔を引っ叩いても、泣くことはなかった。
それが、私が頬を撫で、キスをした時、ヤザキは泣いた。
一年半の時間を振り絞るように、いや、私と出逢うもっと前からの時間の分も、かもしれない。
赤子のように私にしがみついて、ヤザキは号泣した。
私は、その涙を舌で舐めながら、一緒に涙を流した。
窒息する程に抱き合い、舌が痺れるほどにキスをし、二人で泣いた。
そして、私は気付いた。
ここまでヤザキを追い込んだのは、私自身だということに。
ヤザキの心に抑圧されているものに、針で小さな穴を開けて、それが噴き出すのを待っていたことに。
そして、追い込んで、助けを求めて縋りつかれることで、自分が快楽を得ていることに。
そして、私は、無意識でそのような行為をしていた自分のことが、恐ろしくなった。
けれど、私はこれを欲していたのだ。
ヤザキの穴がみたかった。
ヤザキを崩壊させたかった。
ヤザキの闇の、全てを私が、支配したかったのだ。
私の無意識の欲望で、私はヤザキを傷つけ、残酷なことをした。
けれど、男が泣くことができる場所に、私はなりたかったのだ。