エリとヤザキの場合 第二十五話
明け方、寒いから何か着るものを貸して下さいとヤザキにいわれ、笑ってしまった。
ヤザキが自分で望んだことだったのに、貫けなかったことが、可愛くて。
「寒いのもそうなんですけど、洋服を着るというのは、意識していなかったけれど、人間として身体に染み付いているものなのですね。裸でずっといるというのは、何だかとても不安定な気持ちになります」
と、ヤザキはいった。
そして、ベッドで当然のように抱き合って、キスを繰り返した。
ヤザキの舌で口内を犯され、私はふと吐息を漏らす。
すると、ヤザキは私の髪の毛を掴み、私の背中を何度も引っ掻き、首筋に噛みついた。
私はうっとりとして、それを受け入れていた。
そして、ヤザキは満足したのか、私をまた抱きしめてくれた。
ヤザキの胸に抱かれながら、私は小さな声で、つい呟いてしまった。
「大好き」
ヤザキは私が言葉を発したことには気づいたが、何をいったかは聴こえなかったようで、問い返された。
「何でもない」
私はそういって、首を横に振った。
声は届かなかった。
けれど、心には私の感情が届いたのかもしれない。
ヤザキは私を再度強く抱きしめて、キスをしてくれた。
私はとてもそれが嬉しくて、幸せだった。
「射精しちゃ駄目よ」
そういいながら、私はヤザキのペニスを舐めたりしごいたりして、刺激する。
ヤザキは暴れながら、喘ぎ続けている。
「もう駄目です、もう出ちゃいます」
「命令。射精するな。我慢しろ」
「はい…」
そんな会話をしながらも、私は刺激を止めない。
そして、ヤザキは、
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と私に謝罪しながら、射精した。
私は今度はそれを口では受け止めず、ヤザキの身体に向けて飛び散らせ、唾液と混ぜて身体中に塗った。
ヤザキはそのまままた、眠ってしまった。
ヤザキが私の部屋を出る二時間前に、私はバスタブにお湯を入れた。
そして、大きなボウルに、生卵とヨーグルトとケチャップとマヨネーズとラップフィルムを入れ、SM道具と一緒に運んだ。
バスタブにヤザキを入れ、ワンピースを着た私は、顔にラップフィルムを巻いていく。
鼻と口は塞がないように、顔全体に巻きつける。
まるで、包帯で顔を巻いたようになったヤザキに、私は問う。
「目は見える?」
「はい、大丈夫です」
それだけの行為で、ヤザキはすでに勃起して、熱い吐息を漏らしている。
私は、人肌に温めたローションを大量にヤザキの頭からかけて、顔に塗っていく。
ヤザキは震えながら、それを受け入れる。
ラップの中に手を突っ込み、無理やりローションを滑り込ませる。
そして、生卵を割って、それを頭からかける。
口元で卵黄を潰して、口にそれを流し混む。
ヨーグルトをその上から塗っていく。
その姿を、私は笑いながら写真に撮る。
ヤザキは、言葉を発することすら、できない。
ヤザキにはどんな風景が映っているのか、私にはわからない。
バスタブから上がらせて椅子に座らせて、ラップフィルムを外す。
ヤザキは眼を閉じている。
私はボウルにヨーグルトを入れ、ケチャップとマヨネーズを入れ、ローションを入れ、唾液を垂らし、その中に放尿し、それをかき混ぜて、ヤザキの胸に塗った。
「ああ…」
陶酔したような声をヤザキが出す。
私は裸になり、ヤザキの身体全体に、その液体を塗っていく。
顔やペニスが、汚されていく。
ヤザキに抱きつくと、ヤザキも必死に私に抱きついてくる。
私の身体にも、その液体を塗る。
そしてボウルの半分が私たちの身体に塗られ、残りを全て、ヤザキの頭からかけた。
吐瀉物のような匂いと色をしたその液体を全身に浴びたヤザキと、抱き合って、何度も何度もキスを繰り返す。
私は自分の胸にローションを垂らして、胸をヤザキにこすりつける。
そして、その状態で、二人でバスタブに向かい合って、入って、お互いを触り合う。
ヤザキは私のクリトリスを擦り、指を出し入れし、私はいかされてしまった。
また生卵を割って、卵黄が落ちないように両手をお椀状にしながら、卵白をヤザキの顔に垂らす。
そして、卵黄を顔を滑らせて、そのまま口に入れる。
ヤザキの口に入った卵黄を、私の舌で突き破る。
ヤザキの口の脇から、黄色い液体が流れてくる。
ヤザキをバスタブの端に腰かけさせて、ローションや身体に付着した液体で、ペニスをしごく。
私はバスタブの中で、膝をついて、ヤザキを見上げてる。
「ねえ、お願い、こっちを見て。私のこと、見て」
そういって、ヤザキに下を向かせる。
ヤザキの口から黄色い唾液が垂れてくる。
私は舌を伸ばして、それをすする。
「エリさん、もう出ちゃいます」
「昨日から三回目だよ。大丈夫?それに今出したら、私の顔にかかっちゃうよ」
そういって私が笑うと、
「それは駄目です」
とヤザキはいった。
けれど、数秒後ヤザキは射精し、精液は私の顔や胸に飛び散った。
私はそれを集めて、自分の顔に塗り、その顔をヤザキに擦りつけ、キスをした。
しばらくそうやって、余韻を楽しんでから、バスタブのお湯を汚れたお湯を抜き、全身を洗い、綺麗になった身体で二人でバスタブに入った。
向かい合って、お互いに触れながら、話をする。
「WAM、私も初めてだからよくわからないんだけれど、どうだった?」
「えっと、あの、今はまだ、冷静に話せるような状態じゃなくて…」
ヤザキはそういった。
「じゃあ、数日して、振り返ることができるようになったら教えてね」
そういって、今度は歯磨き粉の味のするキスを交わした。
駅まで送る車の中では、ずっと手を繋いでいた。
信号待ちの時、そっとその手にキスをすると、ヤザキも握った私の手にキスをしてくれた。
駅に着き、ありがとうございましたと言いかけているヤザキの唇を、自分の唇で塞いで、舌を入れてキスをして、頭を撫でた。
「また逢える日まで頑張るんだよ。私も頑張るから」
「はい、エリさん。頑張ります」
SMだけではなく、いろいろなことをした、二日間だった。
私は、その中で、多くの気づきがあり、また多くの発見をした。
自分のこれからの人生にとって、とても重要な意味を持つ時間だったと感じている。
そして、まだ僅かにヤザキの匂いの残る部屋に一人で帰り、撮った写真を見ながら、ヤザキに長いメールを二通送った。
一通は、とても幸せな時間で感謝しているという内容。
そしてもう一通は、私の命と人生を捧げるので、一生私の奴隷でいて下さいという内容。
ヤザキと交換した煙草を吸いながら、私はやっとわかった。
「愛しているって、こういうことなんだな」
と。
