犬と猫
M男性は、犬のようなタイプが多いように感じる。
それは、実際にSM行為をしたわけではなくても、一緒に飲んだり、話したり、日記を読んだり、そういうことでも、よく感じる。
尻尾をブンブン振って、舌を出してハァハァいって、命令を待っている犬に、とてもよく似ている。
実際、そう感じているS女性も多いのだろう。
自分の奴隷のことを、「ワンコ」と呼ぶS女性を、私は何人か知っている。
けれど、私はヤザキのことを、犬のようだと感じたことがない。
バラバラになりそうだと死を匂わせるメールを送って、無理をして私に逢いにきても、ヤザキは冷静な顔をして、笑顔を作って、煙草をくわえながら、私に顔をみせる。
私が抱きついてキスをして、やっとその時ヤザキは、その腕を私の背中にまわすことができる。
出逢った頃のヤザキは、自ら私に触れることはなかった。
私が一方的にヤザキを愛玩するだけだった。
ある日やっと、
「エリさん、触ってもよいですか?」
というので、どこを触るのかと想ったら、そっと私の肩を撫でていたことを想い出した。
その話をすると、ヤザキは、恥ずかしくてできないんですよといった。
いつもヤザキはそうだ。
外で二人で飲んでいても、窓の外に視線を向けたまま、そっと私の膝の上に手を置いたりする。
私はそんなヤザキが可愛くてたまらない。
ヤザキはまるで猫のような男だ。
私が何もいわなければ、そっと足をくっつけたり、そっと身体を寄せたり、その程度のことしか自分からはできない。
けれど、私が抱いてあげると、嬉しそうに抱きついてくる。
犬のようなM男性も可愛いと想う。
けれど、私は、「うまく感情表現ができない」という、猫のようなヤザキが、可愛くて愛しくてたまらない。